【MySQL】MySQLとPostgreSQL、実務でどちらを選ぶべきか比較検証

MySQL

こんにちは、かつコーチです。

これでMySQL編は20本目、最終回です。

「新しいプロジェクトのDB、MySQLとPostgreSQLどっちにしよう」

これは、案件のDB選定のたびに必ず出てくる議論です。

どちらも無料で使えるオープンソースのRDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)で、Web開発の現場で広く採用されています。

「なんとなくMySQLは速そう」「PostgreSQLは機能が豊富そう」といったイメージだけで語られがちですが、実際には機能面・用途面・運用面でそれぞれ明確な違いがあります。

この記事では、機能比較・用途比較・運用面の比較の3つの軸でMySQLとPostgreSQLを比較検証し、最後にどちらを選ぶべきかの判断基準を整理します。

機能比較

データ型の違い

PostgreSQLは、MySQLと比べてデータ型のバリエーションが豊富です。

データ型MySQLPostgreSQL
配列型なし(JSON型で代用)あり(INTEGER[]のように直接扱える)
範囲型(期間や数値の範囲)なしあり(tsrangeなど)
JSON型あり(JSONあり(JSONJSONBの2種類)
ENUM型ありあり(やや使い勝手が異なる)
幾何データ型限定的豊富(GIS拡張のPostGISが強力)

特に配列型は、PostgreSQLでは「1つのカラムにタグの配列を直接保存する」といった設計が可能ですが、MySQLではJSON型やリレーションで代用する必要があります。

JSON型についても違いがあり、PostgreSQLのJSONB(バイナリ形式で格納されたJSON型)はインデックスを効率的に張れるため、JSON検索のパフォーマンスで優位です。

MySQLのJSON編の記事で触れた通り、MySQLのJSON型も実用上十分な機能を持っていますが、複雑なJSON検索を多用する設計ではPostgreSQLの方が選択肢が広がります。

SQL標準への準拠度

PostgreSQLは、SQL標準への準拠度が高いことで知られています。

-- PostgreSQL:ウィンドウ関数、CTE(共通テーブル式)が早くから充実
WITH ranked_sales AS (
    SELECT
        product_id,
        amount,
        RANK() OVER (PARTITION BY product_id ORDER BY amount DESC) AS rnk
    FROM sales
)
SELECT * FROM ranked_sales WHERE rnk <= 3;

このようなウィンドウ関数やCTE(WITH句を使った一時的な名前付きクエリ)は、MySQLも8.0から標準対応しましたが、PostgreSQLの方が対応が早く、機能の細部まで充実している傾向があります。

MySQL 8.0以降であれば実務上大きな差はなくなってきていますが、5.7以前のMySQLからの移行を検討している場合はこの点も考慮に入れる必要があります。

トランザクション・DDLの扱い

PostgreSQLは、CREATE TABLEALTER TABLEといったDDL(データ定義言語)もトランザクションの対象に含められるという特徴があります。

-- PostgreSQL:DDLもロールバックできる
BEGIN;
ALTER TABLE users ADD COLUMN phone VARCHAR(20);
-- 何か問題が起きたらDDLごとロールバックできる
ROLLBACK;

MySQLでは、DDLの多くが実行された時点で暗黙的にコミットされてしまうため、マイグレーション中に問題が起きてもDDLだけを巻き戻すことができません。

複雑なマイグレーションを安全に行いたい場面では、この違いがPostgreSQLの明確なアドバンテージになります。

用途比較

Webアプリケーション全般:どちらも定番

一般的なWebアプリケーション(CMS、ECサイト、SaaSの管理画面など)であれば、MySQL・PostgreSQLのどちらでも問題なく構築できます。

フレームワークMySQLとの相性PostgreSQLとの相性
Laravel(PHP)定番の組み合わせ、情報量が多い問題なく使える
Ruby on Rails定番の組み合わせ標準的にサポート、Herokuでの採用実績も多い
Django(Python)使える公式ドキュメントでも推奨されることが多い

特にRuby on RailsやDjangoのコミュニティでは、PostgreSQLがデフォルトの選択肢として扱われることが多く、これは前述のSQL標準準拠度や拡張性の高さが背景にあります。

一方、PHP・Laravelの日本国内コミュニティでは、レンタルサーバーとの親和性の高さもあってMySQLの採用実績・情報量が豊富です。

大量の読み取りが中心のサービス:MySQLが得意

会員数の多いWebサービスやSNSのように、読み取り(SELECT)が書き込みより圧倒的に多い用途では、MySQLのレプリケーション(実践Tips編の関連記事で解説)の手軽さが強みになります。

FacebookやYouTubeなど、大規模読み取りが中心のサービスでMySQLが長年採用されてきた実績も、この特性を裏付けています。

複雑な分析クエリ・GIS用途:PostgreSQLが得意

地理空間データを扱うGIS(地理情報システム)用途では、PostgreSQLの拡張機能であるPostGISが業界標準として広く使われています。

また、複雑な集計・分析クエリを多用するデータ分析基盤でも、ウィンドウ関数や豊富なデータ型を活かせるPostgreSQLが選ばれる傾向にあります。

用途別の比較表

用途MySQLPostgreSQL
一般的なWebアプリ(CMS・EC)定番、情報量豊富定番、標準準拠度が高い
大量読み取り中心のサービス得意(レプリケーションが手軽)対応可能
GIS(地理情報システム)限定的得意(PostGIS)
複雑な分析・集計クエリ対応可能得意(ウィンドウ関数・CTEが充実)
レンタルサーバーでの利用対応環境が多い対応環境がやや少ない

運用面の比較

レプリケーション・冗長化のしやすさ

MySQLのレプリケーション(レプリケーション編で解説した仕組み)は、設定項目がシンプルで、非同期レプリケーションであれば比較的手軽に構築できます。

PostgreSQLのレプリケーションも十分に成熟していますが、ストリーミングレプリケーションの設定項目はMySQLよりやや多く、初学者にとってはMySQLの方が学習コストが低い印象があります。

バックアップ・リストアの運用

観点MySQLPostgreSQL
論理バックアップツールmysqldumppg_dump
物理バックアップツールmysqlbackup、Percona XtraBackup(サードパーティ)pg_basebackup
ポイントインタイムリカバリバイナリログで対応(バイナリログ編で解説)WAL(Write-Ahead Log)で対応

どちらも「論理バックアップ+物理バックアップ+ログによるリカバリ」という基本構成は同じ考え方です。

MySQLのmysqldumpは本連載で扱った通り扱いやすく、コミュニティの情報量も多いため、初めてバックアップ運用を設計する場合は情報を探しやすいメリットがあります。

ホスティング環境の選択肢

日本国内のレンタルサーバー・共用ホスティングサービスでは、MySQL(またはMariaDB)のみサポートというケースが今でも多く見られます。

一方、クラウド環境(AWS RDS、Google Cloud SQLなど)では、どちらもフルマネージドサービスとして提供されており、選択肢に大きな差はありません。

「安価な共用レンタルサーバーで運用したい」という制約がある場合は、MySQLの方が選択肢が広いのが実情です。

どちらを選ぶべきか

目的別の判断基準

  • 個人開発・小規模案件で、レンタルサーバーでの運用を想定している → MySQL
  • Ruby on RailsやDjangoで、コミュニティのデフォルトに沿いたい → PostgreSQL
  • 大量の読み取りが発生するサービスで、レプリケーションを手軽に組みたい → MySQL
  • GISや複雑な分析クエリなど、高度なSQL機能を多用する → PostgreSQL
  • マイグレーションの安全性(DDLのロールバック)を重視したい → PostgreSQL
  • チーム内・案件の実績がすでにどちらかに偏っている → 実績のある方(学習コストと保守性を優先)

実務でのDB選定は、機能の優劣だけでなく「チームの習熟度」「ホスティング環境の制約」「既存システムとの整合性」も含めて総合的に判断するのが現実的です。

筆者の経験では、真っ新な状態から選べる案件は意外と少なく、既存のインフラやチームの経験値によって選択肢が絞られることの方が多いというのが実感です。

どちらも成熟したOSSのRDBMSであり、基本的なWebアプリケーション用途であれば「選んだ方で困ることはほぼない」という点は、安心して覚えておいてください。

まとめ

この記事のポイント

  • 機能面ではPostgreSQLがデータ型・SQL標準準拠度・DDLのトランザクション対応で優位
  • 用途面では、大量読み取り中心のサービスはMySQL、GISや複雑な分析用途はPostgreSQLが得意
  • 運用面では、MySQLの方が学習コストが低くレンタルサーバーの選択肢も広い
  • 選定基準は機能の優劣だけでなく、チームの習熟度やホスティング環境の制約も含めて総合判断する

次に読むべき記事

  • パーティショニングの基本:大規模テーブルを分割する
  • MySQLレプリケーションの基本:仕組みとメリット
  • PostgreSQL編(近日公開予定)

これでMySQL編(全20本)は完結です。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

タグ: MySQL, 中級者向け, 比較検証

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